地域

VOL.18 自分が牽引力になろうと頑張っています

プロフィール
店主:楠原 茂
店名:そば処 楠喜
業種:飲食・銘茶(茶業)
趣味:釣り

創業してから何年ですか?

昭和60年、タイガース優勝のときに開店しました。
そもそも先代が明治26年(なんと125年前!)、この辺りが市場だった頃から楠喜園というお茶屋さんを営んでいましたが、お茶屋さんだけではもったいないということで、そば修業をしていた私が33年前こちらに来て、おそばを始めることになりました。
“楠喜”は“楠喜園”の上の部分をいただいた屋号です。

どんなお店?

国内産にこだわった二八そばを作っています。使用する水によっても味に差が出るので、水にもこだわっています。元々お茶屋さんなので、茶葉の販売もしています。また不定期に料理教室やお食事つき落語会なども開催しています。

 

おすすめのメニューは何ですか?

季節によって茶そばや若ごぼうなどのそばを作っています。
茶そばは宇治の抹茶など厳選した茶葉を使用しています。茶そばって、色がついているだけであまり味がしないというイメージはありませんか?私はそれが嫌で、カフェイン中毒になる一歩手前ほどの(笑)、ちゃんと香りが残る濃い茶そばにこだわっています。
葉ごぼうとも言われる若ごぼうは、枝豆と並ぶ八尾の特産品です。ふきのとうなどの春の山菜のように少し苦みのある、春の香りを楽しめる食材です。そんな若ごぼうは、葉っぱを刈り取り、乾燥させ、粉末にするところまで自分たちで行っています。若ごぼうをそばに入れているところは、他にはないと思います。最近はやっと役所や農協や農家さんと相談する機会ができて、若ごぼうの粉末作りに協力してくれるところが少しずつ増えてきました。作るところが増えれば一般のご家庭にも普及して若ごぼうの認知度が上がるので、それが八尾の活性化に繋がると思っています。

商売をしていて嬉しかったことは何ですか?

小さいときにお母さんと一緒に来てくれていた子が、自分の子供と来てくれたり、アルバイトに志願してきてくれたことです。親子3代で来てくれた人もいて、とても嬉しかったです。
そもそもの先代による地元とのつながりがあったからこそ、こうした体験をさせてもらえているのだと感謝しています。

商店街のPR

毎年体育の日には80会(はちまるかい)の有志が集まり、『グルMESSE』という多種多様なグルメを一度に堪能できる食フェスを開催しています。今年は10月8日(祝月)に近鉄八尾駅ガード下の、スーパーはやし横の買い物公園にて開催しました。
ちなみに80会とは、このあたりの居酒屋、パン屋、レストランなどの飲食店の集まりで、「食を通して八尾を元気に」をモットーに意見交換をする会です。
中には同業者もいますが、対抗するばかりでなく、横のつながりを持てることがおもしろいです。自分はもうこの集まりの中では上の方の年代になっていますが、商売を長い年月続けていることだけに頼らず、若い子から新しいことを学んだり、刺激をもらえることを楽しんでいます。

これからの目標はありますか?

自分が頑張れば周りもついてきてくれると考えています。「楠喜さんが頑張っているからうちもやってみようかな」と思ってもらえるのではないかと。なので、自分がその牽引力になろうと頑張っています。
他のお店も、今も元気なところはそれぞれのウリがあります。美味しいとか安いとかこだわりがあるとか、何かがなければ残っていないと思うのです。正直品揃えが豊富な商店街ですとは言いきれませんが、一店舗一店舗の頑張りによって盛り上がれています。

おそば屋さんならではのご苦労はありますか?

国内産のそばは天候に左右されることです。去年は刈り取りの直前に台風が直撃し、大きな被害を受けました。自分のそばが不作になると、他の地域からブレンドすることも考えなければなりません。召し上がったお客さんに「今年は味がちょっと違うね」と言われることが心苦しい瞬間です。

美味しいおそばの食べ方は?

冷たいそばを食べるときは横に塩を置いて、お箸の先を少し湿らせその塩をつけて食べるとそばの香りがよくわかります。日本酒がよく合いますので、飲んだあとの締めとしてのおそばもおすすめです。地酒のメニューも豊富に揃えていますので、“おそば飲み”にいらっしゃる方も多いです。

一番忙しい時期はいつですか?

年越しそばの時期である年末です。もちろんお店でも召し上がっていただけますし、お持ち帰りもできます。生そばは一般の方が調理することは難しいので、なるべく手軽に美味しく食べてもらうために、瞬間冷凍したおそばを販売することにしました。1000食近く出ます。

 

最後にひとことメッセージ

この辺は大型店舗が多く、お買い物はそちらに行く方が多いと思います。私も時々は行くのですが(笑)、5回に1回くらいは、ぜひ商店街にも足を運んでください。

取材を終えて

とにかくメニューが豊富な楠喜さん。素材の味を感じたり、変わり種を食してみたり、お酒と合わせるもよし、お茶と合わせるもよし。一口におそばと言っても、楽しみ方に幅広い可能性がありました。それは、歴史ある老舗であっても今なお若者の言葉にも耳を傾け、新しいことに挑戦し続けようとする店主さんの姿勢そのものだと感じました。

Top